やっぱり、金よ、金!
お金なのよ!
と思った。
これで感想を終わると作品に誤解を与えてしまうのでもう少し書く。
この本は、筆者の祖母(80歳代)が「一度でいいからロンドンに行きたい、お姫様のような旅をしたい」と告げたことから決行された5泊7日の豪華イギリス旅行の話。
飛行機はファーストクラス、宿泊先ホテルも一流、移動はタクシーがメイン、食事や買い物などもお金の心配は一切不要。資金は一族総出で支援。筆者は祖母をサポートするツアコン(秘書)役で同伴した。
なんだかんだでお金持ちなんですよ、筆者一族。そして祖母はお嬢様。一流の場所で一流のサービスを受けることがサマになっているんです。でも、なんていうでしょう、やはり苦労もあったのでしょう。話のあちこちで心に刺さる名言が飛び出ます。
【詳細】
■飛行機のファーストクラス
食事はただの一流レストラン。そもそもテーブルがおおっき。しかも、CAさんがそこにパリッとしたテーブルクロスを敷き、赤いバラの花を一輪置いていくところから、食事が始まる(注:当時の話)
祖母が寝た後、「もしお時間があるようなら、私のためにホスピタリティ教室を開いてくださいませんか?」とお願いしてみた。(中略)
「わったくしはロンドン到着まで、お二方のお世話が務めでございますので、喜んで」(中略)
それから数時間、祖母を起こさないように他の空席を使って、惜しげもなくプロの技を分けてくれました。
高齢の乗客に対して、注意して目配り気配りするポイント、サポートを申し出るタイミング、具体的にすべき介助。緊張やストレスをほぐすための話し方。(中略)
「大切なのは、お祖母様には何ができないかではなく、何をご自分でできるのかを見極めることだと思います。できないことを数え上げたり、時間をかければできるのにできないと早急に決めつけて手を出したりするのは、結局、お相手の誇りを傷つけることに繋がりますから。」
VIPはなんでもありなんだ。高いお金を払える人にとっては、パンピーが格安物をあさる理由が理解できないだろうなぁと思った。そういう意味で、若いうちにこういったサービスを1度経験するのはありだと思った。
■宿泊先のホテルの食事
あらかじめサービス担当に「高齢であまり量が食べられないから、ハーフサイズにできますか?」とお願いしておいたおかげで、ごくさりげなく小さなポーションにしてもらえて大いに助かったと思っていたら、祖母が
「生牡蠣がとっても美味しかったわ!お代わりを頼んでちょうだい!」と。(中略)
超変則オーダーになり、私はとても焦りました。
しかしレストランスタッフは、「私たち自慢の牡蠣を気に入ってくださって嬉しいですよ。」と、叶姉妹のようなほほえみで鷹揚に応じてくれました。
■宿泊先のホテルでお店に移動する際のバドラーの声のかけ方
祖母はイギリス旅行を楽しんでいるが、高齢なので体力的にもかなり限界にきている。元々足腰が弱ってきているのでこけたら大変だと思っていた時にバドラーが祖母にかけた言葉と祖母の返事
「せっかくのアフタヌーン・ティーです。行き道で転んだりなさると大変ですからね。マダムがお歩きになれることは重々承知しておりますが、是非、車椅子をお使いになって、僕を安心させてください」
「そう、確かに、ご心配をかけてはいけないわね。あなたが押して下さるのなら、いいわ。」
正装のイケメンにエスコートされて車椅子で登場するなら、それは堂々たる姫の佇まい。誇りは、少しも傷つかない。
■宿泊先のホテルのアフタヌーンティー(今は当時とはいろいろ違うみたい)
結構、量が多いそうです。例えば、スコーンは手のひらより一回り大きなサイズだったそうです。
■どこも一緒だわ、、、
祖母が食べきれなくなったものを私のお皿に移動させて、
「若いんだから、たくさん食べなさい」
出た。年寄が食べたくないものを押し付けてくるときのお決まりの台詞。
これ、困るんですよね。私は残飯係じゃないっつーの!!!共感、共感。
勿論、「ほしい、ほしい!」と思う時もありますが。
■祖母からの金言
「小説を書いて食べていくんなら、有名になりたい、褒められたい、売れたい・・・・・そういう欲はぐっと抑えて、何より、誰かの心に寄り添うものを書きなさい。自分のためだけの仕事は駄目よ。たとえ売れたとしても、儲かったことより、たくさんの人の心の触れられたことをこそ喜んで、感謝もなさい。」
「自分を信じて努力して、その結果生まれるのが、自信よ。」(中略)
家事にも育児にも趣味にも努力を惜しまなかった、そんな自分自身への信頼と尊敬が、祖母のあの堂々とした態度の源だったようです。
ショッピングの最中に、私にカメオのブローチをプレゼントしてくれると言い出す祖母。筆者が「私には向いていない、他の物を。。。」とやんわりと言いかけたら、
祖母はやけに厳かな口調で言いました。
「こういうものはね、他人に選んでもらったこと自体が値打ちなの」
今ならなんとなくわかるこの台詞、当時の若い私には、まっくピンと来ませんでした。(中略)
なおも食い下がる私に、祖母は仏頂面でキッパリ。
「あんたが好きな物を買ってあげたら、それを好きでなくなったら、どうでもよくなるでしょう」
「それはそうだけど、好きじゃないものを貰ったら、最初からどうでも・・・」
「好きじゃなくても、目上の人が確かな目で選んだ本当にいいものを、こういう機会に持っておきなさい。思い出にもなるし、目を肥やすための材料にもなるし、困ったときには売ればいいんだし」
(中略)
「困ったときに売ればいい」というのだけは一理ある、と、当時、駆け出しの作家だった私はそう考えました。
(中略)
まさに「貧すれば鈍する」の典型例ですね。
(中略)
祖母は、「いいから大事に持っておきなさい」ともう一度念を押し、店員さんに「これも包んでちょうだい」と言いました。
しかも祖母な、その場で私にカメオを手渡さず、帰国してから、ご丁寧に母を通じて贈ってくれました。
(中略)
母という保険をかけて、カメオを私の手元に確実に留めようとしたのでしょう。
そのカメオは、祖母が死んでずいぶん経つ今も、手放すことなく私の寝室にあります。
カメオのブローチのその後は、似合わないので、現在に至るまで一度も身につけたことがない。だけど、
それでもたまに思い出して小箱を取り出し、蓋を開けてみると、たちまち思い出すのです。あの日のロンドン三越に流れていた、繁華街の喧騒とは無縁の、おっとりとした和やかな空気。
(中略)
大事なのは、このカメオが、私と祖母だけが知る大切な時間と記憶をずっと抱え込み、守ってくれるタイムカプセルの役目を果たしていること。
もういない祖母の気配を私に思い出させ、祖母との絆をつなぎ続けてくれていること。
・羊羹は英語で、、、「ビーンズプディング」というらしいです。なるほど。もし、私が即興で言うとしたら、「Jpanese jelly」って言っちゃうと思う。(≧∇≦)キャー、阿保だわ。
