ブロ友さんおすすめの作品。
コロナ禍の緊急事態宣言を背景に書かれた作品。最初は日常のあれやこれやが綴られた作品かと思ったけど、心に響く言葉があった。よかった。ただし、読み手を選ぶ。40代以上の女性向け(若葉荘の入居条件と同じ)。
女性の社会問題を取り上げた作品だと思うけれど、私が印象に残ったのは登場人物同志の付き合い方。小説だからというのもあるけれど、登場人物の発言に無駄がない。みな、言いにくいことを端的にズバッと言いあっている。言葉がきついな、もめたりわだかまりができたりしないかなとドキドキしたけれど、そういうことはなかった。それぞれの距離から相手をそのまま受け止めて本音で付き合っている感じがよかった。中盤以降はそういうやりとりを清々しく感じた。
以下、私の備忘。
【好きと仕事について】
自分の好きなことがあり、それを仕事にできたら、幸せだろう。(中略)わたしはいくつもの会社で働いてきたのに、「これ!」というものは見つけられなかった。仕事は生活費を稼ぐための手段でしかなくて、好きかどうかで選ぶようなものではないと思っていた。
難しい話。「仕事は生活費を稼ぐための手段でしかない」というのは言い過ぎだけど、好きにこだわり過ぎてはいけない。やっていくうちに「好き」になったり見つけたりというのはよくある話。
【ある登場人物が言った言葉】
「人生が行き詰ってる感じね」
「理屈っぽい」
東洋哲学!「自分とか、ないから!」を思い出した。「自分とか、ないから!」には、理屈っぽいというのは言葉の世界に入っているということ。散歩でもなんでもいいから、「とにかく言葉の世界からはなれて言葉を捨てなさい!無になりなさい!そうしたら、いい考えが浮かぶから。」と書いてあった。
ということで、息子が意味不明な理屈をこねだしたら、「行き詰っているのね」と言ってやろう。
【勉強や学歴について(主人公の考え)】
新卒や二十代のうちでなければ、学歴が意味のあるものだとは思わないが、意味のないものだとも思わない。(中略)学校でちゃんと勉強してきた人とそうでない人で、ベースが違うと感じたことがあった。中学生や高校生の時に、全く興味が持てないという文句を言いながらも暗記した日本史や世界史、何の話をしているのかわからないと思いながらも考え続けた生物や化学や物理、見るだけで頭が痛いと感じながらも解き続けた数学。役に立ったとはっきり思えるような出来事があったわけではなくても、覚える力や観察する力や考える力が養われていたのだ。
これは私も思います。少し話がずれますが、能力がないのに精鋭陣にまじって仕事をするのは不幸です。逆に、能力があるのに活かそうとせずに楽に生きようとするのも不幸を招きます。自分の価値観と能力にあった環境にいることが大切だと思います。
【普通で平凡な主人公を登場人物が褒める言葉】
「人の目を見て話を聞くし、一方的な意見は言わないし、自分の悩みを躊躇わずにダダ洩れさせる」
「色々な人が親近感を持てるっていうことだよ」
「平凡なように見えて、意外なほどいいビジネスパートナーを見つけたのかもしれないと思って」
「いや、平凡っていうのも、褒めてるのよ」
「ちゃんと社会の真ん中にいる感じがする」
(中略)
「ミチルちゃんは、普通の子っていう感じで誰とでも仲良くなって、何も気にせずに真ん中を歩こうとする」
そう、確かにこういう人と一緒にいると安心できる。
