「嫌われる勇気」
10年ぐらい前でしたっけ?一世を風靡した作品です。
当時の私は忙しかったし、アドラー心理学は自己啓発セミナーの宣伝文句に使われていることが多く敬遠していました。最近どこかで紹介されていて積読に入れていました。
すごいですね、今でもまだ図書館で多くの方に読まれています。
さて、内容です。哲学者と若者の対話形式で話が進みます。若者の疑問やつっこみが秀悦です。フロイトやユングの原因論(*1)とアドラーの目的論(*2)の違いについて説明が展開されていました。
(*1)過去の出来事が、現在の状況を作っているとする考え方。カウンセリングで結果に繋がった過去の原因を探り、 その原因を消去したり上書きすれば結果が変わるというアプローチをとる。過去の原因とは事件や事故、トラウマなど。
(*2)人間の行動にはすべて目的があるという考え方。「人は何かの目的があって今の状況を作り出していると説いている」と書かれています。
原因論(*1)とアドラーの目的論(*2)の違いは、
「子供が嫌いだから、結婚に積極的になれない。」と言う人がいた場合、
原因論(*1)で考えると、子供を見ていると幼少時代に両親からうけた虐待を思い出してしまうなどトラウマとなる原因を探って対処していきます。
目的論(*2)で考えると、結婚したくないという目的を達成するための言い訳として子供が嫌いだと言っていると解釈して対処していきます。
この例えからわかるように、原因論(*1)と目的論(*2)のどちらが正解で優れているのかという話はナンセンスです。
注)上の例えは私の自作です。
本書の立場上、目的論(*2)が優位な書き方になっていますが、原因論(*1)を否定しているわけではありません。若者が哲学者に問いかける世俗的な悩みは原因論(*1)では解決しきれなく、アドラー心理学で考えていくとよいという話です。
感想は、共感する部分が多かったです。
あれやこれやと理由をつけて、やりたくないことを後回しにするというのは誰でも身に覚えがあるのではないでしょうか。私は耳が痛くなりました。😅
アドラー心理学では、「やりたくない、できればやらずにすませたい」という目的を達成するためにやらない理由を見つけて言い訳しているという解釈です。こうやって書いていくと更に耳が痛くなります。
あとは対人関係の問題で、
例)他人を変えることは難しいが、自分を変えることはできる
例)10人いれば2人の人には嫌われる
など既になじみがある話も多かったです。
これらのエッセンスだけでも十分に使えますが、どうしてそう言われるのかという根本のところを理解すると正しく使えると思います。
ちなみに、アドラー心理学を実践するためのキーワードは、自己受容、他者信頼、他者貢献です。
私は「アドラー心理学≒自己啓発セミナー≒怪しい」という理解で敬遠していましたが、上に書いたようにアドラー心理学は既に生活の中に浸透しています。
自分を見つめなおすときや、他人との関係を考え直すのにアドラー心理学は有効だと思いました。
先に、「原因論(*1)と目的論(*2)のどちらが優れているのかという話はナンセンス」だと書きましたが、実際には原因論(*1)と目的論(*2)の両方を駆使しながら課題を解決する場合が多いと思います。