- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/11/28
- メディア: 文庫
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『まゆみのマーチ』
主人公の母親は、一見、どこにでもいる、普通のお母さん。しかし、母親の臨終にあたって、主人公と妹が話をする中で、わが子のすべてを受け入れ、信じて愛してやまない一本筋がとおった強い母親像がうかびあがる。信じてくれている人がいるとか、自分は愛されているということでなんとか生きてこれた妹の母親との思い出話が美しく、涙を誘う。たぶん、母親の姿勢は、理想の親/教師像なのだと思う。しかし、現実問題としては、他にも家族や身内がいるわけで、その人達への迷惑/影響も考えると、本当にこれでよいのかとも思う。こういう問題は難しい。。。
『あおげば尊し』
教師という仕事はいったいなんなんだろうと思った。ほとんどの子供にとって、教師は通過点に過ぎないと思う。特に、社会人になってしまうと、思い出の中の登場人物からすら、はずされてしまう。教師の立場からしても、いろいろな問題をおこして、あの先生にはお世話になった、なんて生徒がたくさんいると大変だとは思うけど。
『卒業』
タバコで「サヨナラ」という文字を作って階段の踊り場から飛び降り自殺をした友人。新婚で、もうすぐ子供が生まれるという時期にもかかわらず、遺書はこのタバコの文字以外ない。残されたものはわけがわからない、無責任な死に方だ。それから14年後、当時、おなかのなかにいた子供が、自殺した父親がどんな人だったかを知りたいと、父親の大学時代の友人(主人公)を訪ねるところから物語がはじまる。誠意をもって接する主人公に好感をおぼえた。なかなか、できないことだと思う。
『追伸』
6歳で実母と死別し、その後、義母と一緒に生活することになった少年の心の葛藤を描いた作品。少年は、義母が悪い人ではないことはわかっている。また、繊細な問題なので人がなかなか厳しくしかれないことを盾にして、自分が必要以上にかたくなな態度をとっていることも頭ではわかっている。そうこうしているうちに、主人公も中年になり、今更、態度を改めることをできずにいる。さてさて、義母と仲直りできるのか。主人公も作中で言っているが、ここの家庭の場合、父親の思慮がないのが問題だったと思う。