Beanの日記

徒然日記

美しい夏 パヴェーゼ ★★★★☆

美しい夏 (岩波文庫)

美しい夏 (岩波文庫)

本書の紹介に、「イタリア最高の文学書を受賞」と書いてあったのを見て買った。というのも、イタリアの作家や文学といわれて思いつくものがない。そう思って考えてみるに、ヨーロッパの国で比較的文化が栄えてきた国だし、ファッションやグルメでは有名な国だし、文学がないということはありえないだろう、きっと私が知らない(思いつかない)だけだろうと思った。ところが、wikipediaでイタリア文学を見てみると、代表的な作家・詩人・評論家として22件しか掲載されていなかった。その中で私が知っている作者または作品は3件あり、ダンテの「新曲」とジョヴァンニの「デカメロン」、カルロの「ピノッキオの冒険」。22件中3件すなわち1割強だから、私てきにはそんなもんかなという感じだ。意外・・・
作品の内容は、ジーニアという少女の青春恋愛小説。といっても、ヨーロッパ文学にありがちな、高ぶる感情がどんなものであったかとか、相手がどれだけすばらしくみえたかという大げさな説明は殆どなくあっさりしていた。200ページ足らずの作品だったのですぐに読めてしまう反面、自分の中できちんと理解して消化しきれていない気がしてならなかったが、あとがきと解説を読んでだいぶ解決した。青春恋愛小説にはかわりないが、「恋愛そのもの」ではなく「人の少女が大人へと変わる"瞬間"」を描きたかったらしい。そこまで知ると、そのテーマと文体がとてもマッチしている気がした。解説によると、「丘の上の悪魔」、「孤独な女たちのあいだで」という作品といっしょに三部作のような形をとられており、それぞれの作品で同一人物かと思うぐらい文体が違うらしい。今度、他の作品も読んでみて比べてみようと思う。