思い出トランプ 向田邦子

思い出トランプ (新潮文庫)

1.かわうそ
うーん、今も昔もかわらず、日本の家庭にありがちな話。主人公の奥さん厚子さんは専業主婦なのだが、かしこいというか要領がいいというか、なんでもそつなくやり過ごす世渡り上手タイプとして描かれている。新聞の勧誘、押し売りなどにも適当な嘘をついて相手を怒らせることなく、しかし相手の言いなりにもならず速やかに相手を追い払ってしまうのだ。
しかし、私は厚子さんのようなタイプの人間が大嫌いである。だいたいこういうタイプの人がつく嘘というのは何回かつかれると「あっ、また嘘ついている」とわかるようになる。もっと嫌悪感が強くなると、嘘をつかれていなくても嘘をつかれているような気がしてきて不愉快なのだ。ぶつぶつ。