火車 宮部みゆき

火車 (新潮文庫)

この小説の背景にあるのは、クレジットカードによるカード破産、マイホーム購入の際に組んだローンの返済のために手を出した消費者金融が原因でのサラ金地獄だ。10年から20年ぐらい前、日本のマスコミでもよく話題にとりあげられていたと思う。これらが引き金になっておこった犯罪を本間刑事が解いていく形で話が進行する。
推理小説の本題の謎解きの部分や、その裏に見え隠れする不幸な事情はもちろんだが、本間刑事および周囲の人々についても丁寧に書かれており話に厚みを感じる。赤川次郎の黒猫ホームズのように、本間刑事シリーズができそうな勢いだ。もしできたら(あれば)、買うだろうなぁ。
あとがきのところをみると、宮部みゆきさんがこの作品を書くにあたって専門家の方にしっかりと話を聞き、調査、理解された上で作品を書かれたことがうかがえる。
文庫本にして600ページほどの長作だが、冗長的な印象はなく、最初から最後まで楽しく読むことができた。
最後に、作品中で目を引いた言葉のリストをあげる。これらは全て、本間刑事の家に出入りする家政夫の井坂氏の発言(作品が長いので正確ないいまわしはうる覚え・・・)。
・二代目は、失敗はすべて人のせいにするように教えられてきた
　→この二代目は中小企業の二代目であるが、
　　大きな組織ではこういうことをいかにスマートにできるかが出世できるかどうかの１つのポイントだと思う（＾＾；
　　こういうことをスマートにする秘訣は、自分は悪くないと信じ込むことかな(笑)
・ひどいことをする奴は、ひどいことをする理由なんてない。理由は、ひどいことをした後で考えてくっつけるだけだ
　→賛成