- 作者: 連城三紀彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/08
- メディア: 文庫
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この話も、すごく面白いというわけではない。
かぎりなく平凡で、どこにでもありそうな話をつづった作品。自然と脳裏に情景が浮かぶ。なんとなく情景を見続けたくて、ページをめくる作品。
あらすじは次のとおり。
美容師の美木子の夢は自分の店を持つこと。そしてそれを実現させた。
美木子の夫、計作は元自動車メーカの営業マン。美木子が店を出して少ししたら会社を辞めた。店を手伝うためである。バカがつくぐらい寛大で気遣い屋。何があっても、「俺ならいいよ。」といって、相手に譲る。
美木子はそんな計作にすまないと思いながらも甘えて暮らす。一方で、計作という人間と真にぶつかり合っていないのではないかという心の不安もかかえている。そんな美木子と計作夫婦の間の話が淡々と書かれている。
美木子の気持ちは理解しやすい。描写が多いせいかもしれない。それに反して、計作の心理はわかりづらい。計作の「俺ならいいよ」という口癖は、美木子だけに向けられた特別のやさしさなのだろうか?それとも誰にでもそう言うのだろうか?
計作が美木子のことを本当はどう思っていたのか、話をもう一度、頭の中で思い出してみる。美木子のことばかり書いてある話の中に、ほんのちょっとだけど計作のことが書いてある。腕のいい営業マンだったこと、いつも美木子の気持ちを一番に考えていたと推測できるいろんなこと。
計作の「俺ならいいよ。」は、美木子に向けられた特別な言葉だったんだと考えついたところで、涙度2。*1